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下平 昌樹; 河 侑成; 高見澤 悠; 勝山 仁哉; 鬼沢 邦雄
Proceedings of ASME 2023 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2023) (Internet), 11 Pages, 2023/07
最新の原子炉圧力容器の構造健全性評価においては、マスターカーブ法に基づく正確な破壊靭性参照温度Tの取得が必要である。破壊靭性参照温度TはMini-C(T)破壊靭性試験片によって取得可能であり、この試験片の寸法や初期亀裂形状に関しては、ASTM規格のE1921や日本電気協会電気技術規程JEAC4216に規定されている。最近、ASTM E1921では評価の正確性や試験を行う上での利便性を向上させるために、何度か予亀裂形状に関する規定の変更が行われてきた。このような規格の改定に伴うMini-C(T)試験片の許容予亀裂形状の変化は、予亀裂先端の塑性拘束状態を変化させ、T評価に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、ASTM E1921やJEAC4216に規定される予亀裂形状に関する要求の妥当性について議論するため、Mini-C(T)試験片の予亀裂湾曲が破壊靭性評価に及ぼす影響について、ワイブル応力解析を含む有限要素解析によって定量的に評価した。その結果、ASTM E1921-21で定められた最大湾曲を有する亀裂形状の場合、亀裂先端の塑性拘束が弱められ、理想的な直線状亀裂を有するMini-C(T)試験片で得られる破壊靭性値に比べて高めの破壊靭性値が得られる可能性を示した。また、上述の最大湾曲を許容した場合、非保守的なTが取得されることをワイブル応力解析によって示した。一方、JEAC4216で許容される最大湾曲を有する亀裂形状の場合は、理想的な直線状亀裂の場合と比べてTの有意な差は見られなかった。
永瀬 文久
Annals of Nuclear Energy, 171, p.109052_1 - 109052_8, 2022/06
被引用回数:2 パーセンタイル:50.96(Nuclear Science & Technology)冷却材喪失事故において、酸化されたZr合金被覆管がスペーサーグリッドにより急冷時に強く拘束されると燃料の破損限界が低下する。したがって、軸方向拘束の現実的なレベルを推定することが、燃料の安全性に関するひとつの課題である。本研究では、PWR型模擬燃料セグメントと33グリッド片からなる試験体を、水蒸気中で加熱,冷却、および急冷し、燃料セグメントにかかる軸方向拘束力を測定した。ジルカロイ製グリッドの拘束力は温度とともに徐々に低下した。1060K以上に加熱されると、拘束力の低下は回復しにくく、冷却および急冷時の最大拘束力は以下10Nであった。インコネル製グリッドについては、拘束力が以上1070Kで明らかに減少したが、冷却により部分的に回復した。インコネル製グリッドによる最大拘束力は20から50Nであった。従来研究で予測されたような非常に強い拘束は、グリッド位置での酸化,膨れ,破裂、または共晶形成によって起こる可能性は一般的には低い。
下平 昌樹; 飛田 徹; 高見澤 悠; 勝山 仁哉; 塙 悟史
Journal of Pressure Vessel Technology, 144(1), p.011304_1 - 011304_7, 2022/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Engineering, Mechanical)JEAC4206-2016における原子炉圧力容器の構造健全性評価では、材料の破壊靭性が、想定欠陥であるクラッド下半楕円亀裂の先端における応力拡大係数よりも高いことが求められている。しかしながら、破壊靭性試験片と想定亀裂の亀裂深さやクラッドの有無といった違いにより、塑性拘束状態や破壊靭性評価に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、クラッド下亀裂が破壊靭性評価に及ぼす影響を調べるため、3点曲げ破壊靭性試験及び有限要素解析を実施した。その結果、クラッド下亀裂の塑性拘束が表面亀裂のそれに比べて弱いことを解析によって示した。さらに、クラッド下亀裂の弱い塑性拘束の影響により、クラッド下亀裂の破壊靭性が表面亀裂よりも見かけ上高くなることを実験及びローカルアプローチによって明らかにした。
下平 昌樹; 飛田 徹; 名越 康人*; Lu, K.; 勝山 仁哉
Proceedings of ASME 2021 Pressure Vessels and Piping Conference (PVP 2021) (Internet), 8 Pages, 2021/07
JEAC4206-2016における原子炉圧力容器の構造健全性評価では、材料の破壊靭性が、想定欠陥であるクラッド下半楕円亀裂の先端における応力拡大係数よりも高いことが求められている。しかしながら、破壊靭性試験片と想定亀裂の亀裂深さやクラッドの有無といった違いにより、塑性拘束状態や破壊靭性評価に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、半楕円亀裂に対する拘束効果やクラッドが破壊靭性評価に及ぼす影響を調べるため、4点曲げ破壊靭性試験及び有限要素解析を実施した。その結果、半楕円亀裂最深点における見かけの破壊靭性がマスターカーブ法に基づく5%信頼下限を上回り、現行評価手法が保守性を有することを確認した。半楕円亀裂における破壊の起点は亀裂最深点だけでなく試験体表面近傍にも観察された。有限要素解析の結果、半楕円亀裂における塑性拘束は亀裂最深点に比べて表面近傍で弱くなっていることが分かった。また、表面亀裂の場合に比べてクラッド下亀裂の場合には塑性拘束が弱められ、その弱い拘束の影響によりクラッド下亀裂の見かけの破壊靭性が表面亀裂のそれよりも高くなることがローカルアプローチによって示唆された。
辻 延昌*; 柴田 大受; 角田 淳弥; 石原 正博; 伊与久 達夫
FAPIG, (169), p.13 - 17, 2005/03
高温ガス炉(HTGR)の高性能化に伴い、より高温となる炉心条件において燃料温度を許容温度以下に保つためには固定反射体ブロック間の間隙を狭め炉心をバイパスする冷却材流れを制限しなければならない。本研究は、冷却材流路を連成した3次元伝熱解析を実施し、高い耐熱性を持つ炉心拘束機構を開発してバイパス流れを厳しく制限しなければならないことを解析的に明らかにした。この炉心拘束機構として有望な候補材であるC/C複合材に着目し、最適厚さの設計及び直交異方性材料のFEM応力解析によりC/C複合材製の耐熱性炉心拘束機構の実現可能性があることを示した。本論文は、2004年10月に韓国済州島にて開催された国際会議(APCFS2004)で発表したレポートを和訳して紹介するものである。
永瀬 文久; 谷本 政隆*; 上塚 寛
IAEA-TECDOC-1320, p.270 - 278, 2002/11
高燃焼度燃料のLOCA時挙動を評価するための基礎データを取得することを目的に、原研は体系的な研究計画を進めている。これまでに、非照射被覆管を用いた高温酸化試験を実施し、酸化速度に対する予備酸化と予備水素吸収の影響を分離的に調べた。また、被覆管の急冷時耐破断特性に及ぼす予備水素吸収の影響を調べるためにLOCA条件を模擬した「総合的な熱衝撃試験」を行った。試験の結果、軸方向拘束のない条件下では、破断限界となる酸化量に、予備水素吸収の影響が見られないことが示された。一方、拘束される条件では、予備水素吸収により破損限界酸化量が低下することが判明した。
内田 雅大; 吉野 尚人
JNC TN8410 2001-016, 36 Pages, 2001/05
本技術報告は、東海事業所地層処分基盤研究施設に設置してある亀裂状媒体水理試験設備(LABROCK)において、原位置と同じ垂直荷重状態とするために原位置での透水試験を行った天然岩体の採取状態についてまとめたものである。なお、本資料は、平成5年10月に動力炉・核燃料開発事業団によって取りまとめられたものである。
内田 雅大; 吉野 尚人
JNC TN8410 2001-015, 35 Pages, 2001/05
本技術報告は、東海事業所地層処分基盤研究施設に設置してある亀裂状媒体水理試験設備(LABROCK)において使用する釜石原位置試験場天然岩体の切り出し、整形についてまとめたものである。なお、本資料は、平成5年3月に動力炉・核燃料開発事業団によって取りまとめられたものである。
高治 一彦; 鈴木 英明*
JNC TN8400 99-041, 76 Pages, 1999/11
緩衝材には、止水性、自己シール性、核種収着性、熱伝導性、化学的緩衝性、オーバーパック支持性、応力緩衝性等が長期にわたり維持されることが期待されている。これらの機能を比較的満足し得る材料として、天然に産する粘土が注目され、中でも圧縮されたベントナイトは、非常に低い透水性による水の動きの抑制、水の浸潤に伴い膨張し圧縮ベントナイト中の間隙や隣接する岩盤中の割れ目への充填、陽イオン核種を収着する陽イオン交換能を有している等の点で優れており、緩衝材として最も有力であると考えられている。サイクル機構では地層処分研究の一環として、人工バリア技術開発および安全評価の基礎データとするために緩衝材の特性に関する研究を進めている。本報告書は、緩衝材としての圧縮ベントナイトの力学特性の把握を目的として、圧裂試験、一軸圧縮試験、一次元圧密試験、圧密非排水三軸試験、圧密非排水三軸クリープ試験についての手順、試験条件、結果および考察について、これまで取得されていなかった物性や、既報を補完するための追加試験等に関してまとめたものである。圧裂試験結果よりケイ砂混合率、乾燥密度と引張強度の関係等、一軸圧縮試験結果より含水比、乾燥密度と一軸圧縮強度、弾性係数の関係等、一次元圧密試験結果より圧密応力と間隙比の関係等、圧密非排水三軸試験結果より有効拘束圧毎の応力経路等、圧密非排水三軸クリープ試験より、載荷応力毎のひずみ速度の経時変化等を把握することができた。
Park, H.; 山野 憲洋; 丸山 結; 森山 清史; Yang, Y.; 杉本 純
第35回日本伝熱シンポジウム講演論文集,3, p.803 - 804, 1998/00
温度範囲55Cから飽和温度近傍までの冷却水を初期温度2500Cのテルミットに注入する場合のFCIの強度に対する系の拘束の影響を実験によって調べた。実験で測定された機械的エネルギーは、系の拘束が弱いときは冷却水のサブクール度の増加とともに増加したが、拘束が強い系では逆に減少した。これにより、FCIによる機械的エネルギー発生は時間スケールの短い溶融物の細粒化による混合の促進と、時間スケールの長い溶融物細粒の冷却という、2つの異なる時間スケールの現象により支配されていることがわかった。
Park, H.; 山野 憲洋; 森山 清史; 丸山 結; Y.Yang*; 杉本 純
Proc. of 11th Int. Heat Transfer Conf. (Heat Transfer 1998), 6, p.69 - 74, 1998/00
CI(Coolant Injection)モードのFCIの強さに対する冷却水ジェットのサブクール度、運動エネルギー及び系の拘束の影響を実験により調べた。測定された機械的エネルギーは、系の拘束が弱いときは冷却水のサブクール度の増加とともに増加したが、拘束が強い系では逆に減少した。また、冷却水の速度の増加とともに増加した。この結果は溶融物内での冷却水ジェットの貫入と分散がFCIの強度を決める重要な要素であることを示唆する。現象の基礎的な物理を理解し、実験における粗混合条件を推定するために、非沸騰・等温系でジェットをプールに注入する可視化実験を行い、また数値シミュレーションを行った。
宇賀神 光弘; 赤堀 光雄; 伊藤 昭憲; 大岡 紀一; 中倉 優一
Journal of Nuclear Materials, 248, p.204 - 208, 1997/00
被引用回数:8 パーセンタイル:56.29(Materials Science, Multidisciplinary)ホットプレス法とピクチャーフレーム法とにより調製したUSi基燃料をJMTRで照射した。燃焼度は、最高約60%FIFAで照射温度は約190C~280Cであった。照射後試験の結果、次のことが分かった。中性子照射によって燃料は、液体類似の性質を示すことから示唆される非晶質化を起こすとともに塑性変形する。この結果、FPガス気泡が成長・粗大化しスエリングは大きくなる。この燃料スエリングは、被覆材の拘束力により抑制できる。USi-Al反応に関しては、USi表面の酸化前処理によって反応層の厚みは著しく減少する。
草間 朋子*; 甲斐 倫明*
PNC TJ1602 91-002, 14 Pages, 1991/03
核燃料施設における放射線防護の最適化について検討した。操業段階における最適化では、従来の費用便益解析などの手法を適用した定量的な解析は多くの場合困難である。セル内作業における最適化のあり方を検討した結果、1つの作業ごとに放射線管理に関する記録は次の類似の作業の防護の最適化に役立つように残すためには、放射線管理現場における記録のフォーマット化が必要であることが明らかになった。また、それらの放射線管理記録を効率よく利用していくためには最適化支援データベースを作成することが操業段階のメイテナンスなどにおける最適化を進めるのに有用であることを示した。
二川 正敏; 菊地 賢司; 武藤 康
日本原子力学会誌, 29(4), p.310 - 318, 1987/04
被引用回数:0 パーセンタイル:0.02(Nuclear Science & Technology)VHTR炉床部構造試験体を傾斜させて、炉心拘束機構の拘束力及び漏れ流量の変化について試験を行った。傾斜時に発生する力は静的水平地震荷重を模擬している。また、傾斜による炉床部構造試験体の挙動を簡易ブロック群の滑りモデルによって解析し、黒鉛ブロック群同士及び黒鉛ブロック群と鋼板間の見掛けの摩擦係数を実測値と比較,検討した。その結果、次のような結論を得た。(1)炉心拘束機構の拘束力の変化量は、20度まで傾斜した後にゼロに復元しなかった。また、繰り返し傾斜による変化量の増加はなかった。(2)簡易ブロック群の滑りモデルによって得られた見掛けの摩擦係数は、黒鉛ブロック群同士が0.10,黒鉛ブロック群と鋼板間が0.19であった。(3)傾斜による漏れ流量の変化は、ほとんどなかった。
二川 正敏; 菊地 賢司
JAERI-M 85-054, 16 Pages, 1985/04
静的水平地震荷重を模擬したVHTR炉心構造試験体の傾斜試験によって,炉心拘束幾構の拘束力の変化重を調べた。更に、傾斜時の炉床部構造物の挙動を簡易ブロック群の滑りモデルによって解析した。また、黒鉛同士及び黒鉛と鋼間の見掛けの摩擦係数を摩擦係数測定試験結果と比較、検討した。その結果、次のような結論を得た。(1)炉心拘束機構の拘束力の変化量は、傾斜後ゼロに戻らない。(2)見掛けの摩擦係数は、大気中で黒鉛同士が0.10、黒鉛と鋼間が0.19となった。
菊地 賢司; 二川 正敏; 滝塚 貴和; 蕪木 英雄; 佐野川 好母
日本原子力学会誌, 26(7), p.977 - 987, 1984/00
多目的高温ガス実験炉の炉床部では、漏れ流量を減少させるため、炉心周囲からの拘束力により黒鉛ブロックを締め付けてブロック間すき間を狭くしたり、すき間にシール要素を置いている。そこで、1/2.75スケールの炉床部構造の試験体を製作して、ブロック間のすき間や相対段差と炉心拘束力の関係、試験体傾斜角と炉心拘束力の関係、シール要素の漏れ流れ特性を調べた。その結果、以下のことが明らかになった。(1)炉心拘束力は、高温プレナムブロック間のすき間を減少させるのにかなり効果があるが、高温プレナムブロックと固定反射体間のすき間に対してはほとんど影響がなかった。(2)高温プレナムブロックや固定反射体間に水平に設置された黒鉛シール要素は、流路のすき間流れを約1/3に減少させた。
國富 一彦; 菱田 誠; 田中 利幸
JAERI-M 83-151, 23 Pages, 1983/09
多目的高温ガス実験炉の炉心周囲に配置されている固定反射体は炉心拘束機構によって締め付けられる設計となっている。現在、炉心拘束機構の形式としては、バンド方式、スプリング方式が考えられておりそれぞれの形式について検討が行われている。本報告書では、バンド方式炉心拘束機構のリラクセーションについての検討を行った。すなわち、2 1/4Cr-1MoとSUS304で模擬炉心拘束バンドを製作し、リラクセーションの試験を行い、その結果を2 1/4Cr-1Mo標準試験片で行ったリラクセーション試験の結果と比較し、炉心拘束バンドのリラクセーションは標準試験片のリラクセーション挙動から予測できることを確認した。また、同様の方法により実験炉の炉心拘束バンドリラクセーション特性について考察した。
伊与久 達夫; 元木 保男
JAERI-M 82-058, 48 Pages, 1982/06
本計算コードFLOSAは、多目的高温ガス実験炉の炉心拘束機構を対象として、地震時における拘束バンド方式およびリンク・バネ炉心拘束機構の設計用解析コードである。計算コードFLOSAの目的は、(1)炉心拘束機構の要素およびタンジェンシャルキー部分に地震時に作用する荷重を解析し、(2)固定反射体の変位を計算し、(3)リンク接合部に存在するギャップの影響を評価することである。計算例として、拘束バンドについてはシステム総合設計を、リンクバネ拘束方式については詳細設計(I)をベースにして検討した。
村上 洋
no journal, ,
逆ミセルは、無極性溶媒中で界面活性剤分子の自己組織化により形成され、ナノメートルスケールの球殻の中に水を含む。逆ミセルのサイズは実験的に制御可能であり、蛋白質分子やDNAを含む、水溶性分子をその中に溶かすことが可能である。そのため、逆ミセルを用いて、水や導入分子の物性のナノ空間拘束効果がこれまで広範に調べられてきた。最近我々は、界面活性剤AOTと溶媒イソオクタンを用いて調製した半径1nm程度の逆ミセルにおいて、導入色素分子の周りの水の拡散運動が室温付近で凍結しており、また、水媒質の格子緩和エネルギーが逆ミセル中の水分子数の少なさに起因して小さいことを示した。そこで、我々は逆ミセル中色素分子のホールバーニング分光を着想した。室温で色素分子の周りがガラス的であれば、永続的ホールバーニングが可能であり、また、小さな格子緩和エネルギーは、ホールバーニングスペクトル幅の先鋭化に導くと考えられる。ホールスペクトルの逆ミセルサイズやホールバーニングのための照射レーザー波長依存性の結果と、色素溶液や色素高分子膜の結果も示し議論する。
村上 洋
no journal, ,
逆ミセルは、無極性溶媒中で界面活性剤分子の自己組織化により形成され、ナノメートルスケールの球殻の中に水を含む。逆ミセルのサイズは実験的に制御可能であり、蛋白質分子やDNAを含む、水溶性分子をその中に溶かすことが可能である。そのため、逆ミセルを用いて、水や導入分子の物性のナノ空間拘束効果がこれまで広範に調べられてきた。最近我々は、界面活性剤AOTと溶媒イソオクタンを用いて調製した半径1nm程度の逆ミセルにおいて、導入色素分子の周りの水の拡散運動が室温付近で凍結しており、また、水媒質の格子緩和エネルギーが逆ミセル中の水分子数の少なさに起因して小さいことを示した。そこで、我々は逆ミセル中色素分子のホールバーニング分光を着想した。室温で色素分子の周りがガラス的であれば、永続的ホールバーニングが可能であり、また、小さな格子緩和エネルギーは、ホールバーニングスペクトル幅の先鋭化に導くと考えられる。ホールスペクトルの逆ミセルサイズやホールバーニングのための照射レーザー波長依存性の結果と、色素溶液や色素高分子膜の結果も示し議論する。